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無理に目鼻をつけようとするな、混沌が死ぬ (湯川秀樹)

なのだそうです。湯川秀樹は、エッセイも抜群のおもしろさですね。僕は、知魚楽の話が大好きなんですけど。

 

って、湯川秀樹の話を書く訳じゃなくて、一見、物理学なんてのともっとも縁が遠そうな、「怪奇小説」の話。

 

怪奇小説って読まないんですよね・・・って、これを書こうとして振り返ったら、定義によるかもしれないけど、まあ、読んでないこともない。でも、単純に怖いのがきらいなので、読みながら(、あるいは映画を見ながら)、こんな超自然のことはあるはずがない、ウソ、ウソ、ここがおかしいよ!、なんて自分を説得しているのがわかるので、本当におもしろいと思ってるのやら思ってないのやら…

で、都筑道夫の、「怪奇小説という題名の怪奇小説」

怪奇小説という題名の怪奇小説 (集英社文庫) 都筑 道夫

これ、怖かったですね~もちろん、お化けが出てくる訳じゃ…あ、いや、ネタバレはおいておいて、でも、現代の日本にだって、これ、絶対無いとは言えないような話…かつ、主人公の小説家がパクろうと思ったペーパーバックとその翻案と現実とがない交ぜになって、どこまでがどの話かぐるぐる回っちゃって…

 

都筑道夫によると(正確には、主人公の小説家によると、ですが)、現代の怪奇小説は、三つのタイプに分けられるそうです。

1)昔ながらの怪談をストレートに書いているもの

2)現代人に馬鹿にされないように、超自然は避けて、異常な人間関係などを扱ったもの

3)怖がらせることはあきらめて、ストーリイのひねりで読ませようとするもの

なのだそうです。まあ、僕が読んでるのも2)ですね。スティーブン・キングなんてのも、2)がほとんどかな?シャイニングなんて、これですよね。

でも、この都筑作品は、1~3が、ぜんぶうまく含まれていますね。特に、2と3ではあるかもしれないけど。その3つの要素をうまくおりこんで、最上の怪奇小説に仕上がっています。かつ、都筑道夫の大好きなところは・・そのペダンチックさを隠そうともせずに作品に盛り込み、その知識や情報で、どの作品も――都筑作品は、ショートミステリーのようなものも多いのですが…ちなみに、彼は、エラリークイーンミステリーマガジン(EQMM)の編集長でもあった――肉厚の、読み応えのあるものになっていることで、特に若いときは、そのペダンチックさが大好きだったのですが、年取って読むといやに感じるかな?と思っていたのですが、いやいや、やっぱり、「そうか~、そうなのか~。そう来たか~」ってところが、読んでて快感!

 

さて、冒頭の言葉は、文庫の解説を書いている“道尾”秀介さんが引用しているものです。この都筑作品、先に書いたように、どこまでがどの世界の話で、どこまでが現実で、誰が誰で…というのがぐるぐる回っちゃうきわめてトリッキーな作品(上の、3)にあるように・・・)なのですが、そこに、無理矢理方程式を解くかのように、これがあちらで、彼はこちらで…などと、解説でもしようものなら、この「怪奇小説と…」の幻想的な世界が一気に崩れてしまいます。

 

混沌は、中国の神話に登場し、天地開闢の時から生きているが、耳、目、口、鼻の七孔(7つの穴)が無く、その場をぐるぐる回っているだけだった。不憫に思った神が七孔を穿ってやったところ、混沌は死んでしまった、と…

渾沌 ? Wikipedia

混沌の存在の善し悪しは別として…というより、陰と陽のように、いくら物事を合理的に、科学的に説明し尽くそうとしたとしても、決して無くなることはないものとして、その混沌を、混沌とした部分を、湯川秀樹は大切にしたかったのでしょうね。

もっとも、この文を、不確定性原理とか、シュレジンガーの猫といった視点から読むと、また、違った説明ができそうで…その解釈も、混沌としているかも?!

 

ありゃ、怪奇小説の話をしようと思ってたのに、なんだか違う方向に。しかも、取り上げようと思った文庫が本棚に埋もれている…と言うわけで、そちらの話は、またいつか。

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