いわゆる時代小説、余り読まないんですよ。大河ドラマに関係あるのをたまに読んだり、と言う程度で・・・
それなのにこの本に惹かれたのは・・・GWに車を運転していたときに聞いていた、NHKのラジオの番組。その中で、番組の中の人が絶賛していたというのもあるのですが、著者高田郁さんご本人の朗読、これが素晴らしくて、思わずメモして(車を降りてからね)すぐポチったと言うわけです。
実際は、多分朗読したのが第二巻だったので、ググった関係でこちらを先に注文して読んじゃったのですが。
シリーズとして、まだ続いているようで、さらに第一巻に当たる「八朔の月」には漫画版もあります。これもステキ。
さて、時代小説を余り読まない僕が本の解説をするというのもアレなので、Amazonの書評を見てみると、これが、どんぴしゃ!これこれ!って感じなので、少し引用させていただきますと・・・
非常にベタな展開ですが 主人公の澪をはじめ 登場人物の 一言や描写に 目頭が熱くなります
そうそう。そうなんですよ。主人公の澪(みお)は、「雲外蒼天」(雲に覆われたような、重く辛い人生を送るが、その雲を越えたところでは蒼い空を望むことが出来る)と人相見に言われた子。味覚に、そして料理に、優れた才能を持つが、大阪(当時は、大坂)の洪水で父と母、そして無二の親友を失い、拾ってくれた料理屋天満一兆庵が火事に遭い、江戸に出てきます。ここでも、ふとした縁で拾われたつる家で働きはじめます。
いまでこそ、関東と関西の味の違い、その理由(水の違いと、カツオとコンブの手に入りやすさ、醤油の色合いの違い、等など)など、料理に携わってなくても本を読めばわかることなのかもしれませんが、話の中での澪は、江戸の味に慣れず、上方の味をなんとかわかって貰おうと苦戦しますが、最初は全くダメ。しかし、不思議な浪人(?)小松原や、周りの人に助けられつつ、血と涙の思いで試行錯誤して、皆がおいしいと言ってくれる料理を作っていきます。
さらに、水だけで無く、職人が多い(+武士が多い)江戸と、商人の街大坂との、分化・背景の違いも料理の好みに現れることも、次第に学んでいきます。
決してうんちくに走ること無く、かつ、高田郁さんの優しさと(多分)食べ物に込められた気持ちがよく伝わってくるお話、そして料理が展開されていきます。・・・ので、読んでてお腹がグー
作者が登場人物にもお料理にも、心からの愛情を抱きながら描いていることが読んでいてよく感じられます。
人情物の時代小説が好きな人には、間違いなしの傑作だと思います。また、初めて時代小説を読む人、お料理好きにもおススメです。
まさに、そんな感じの本です。
ただ、目頭が熱くなるのは、澪ちゃんが苦労するから、あるいは皆が助けてくれるから、そんな場面があるから、ではなくて・・・
澪やその他の登場人物の言葉に、はっとさせられる・・・つまり、高田郁さんがこの本を通じて伝えたかったメッセージ(料理のうんちくではなくて)に、共感し、励まされ、ふと目頭が熱くなってしまうのです(年のせいか、涙腺が・・・)
話の中では(まだ、二巻までしか読んでませんが)、いろいろな食べ物が出てきますが、最もおいしそう・・・食べてみたいと思ったものの一つが(描写が)、大坂の洪水のあと父母と離れ(父母を失い)、一人さまよっていた澪が、天満一兆庵のご寮(りょん)さん(=女将さん)に救われ、重湯を食べる場面です。
甘い。なんて甘いんやろう。
澪は驚いてはっきりを瞳を開いた。米の甘みが舌から口一杯に広がった。(略)
「これがお米の味や。他には何も足しててへんのやで(略)」
いいながら、芳(ご寮さん)が重湯をもうひと匙、澪の口に含ませる。
美味しい。
澪は心の底からそう思った。こんな時でも美味しいと思えるのが、自分でも不思議だった。(以下略)
ううぅ・・・本当に美味しいお米食べたい!
と言うわけで、お話はまだまだ始まったばかり。
澪の作る料理に嫉妬し、つぶしにかかる神田の登竜楼との戦いも続きます。
負けるな澪!がんばれ~
食べ物が主題になる小説やエッセイは多いがこれはそのなかでも
明らかに「当たり」の本。世知辛い世の中や時間に追われて、ご飯も適当に済ませてしまっている人に
手に取ってもらいたい。美味しさって何だっけ、人情味って何だっけ?っていうのを思い出させてくれる。
はい。読み終わるのがもったいない、と思った本は、本当に久しぶりです。
LEAVE A REPLY